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遠い国の少女へ


あんまり人に話したことがないんだけど
縁あって、とある国の少女を金銭的に支援してきた。

正確に言うと、とある国の少女と、その家族と
その家族が住む地域に使われるお金を支援してきた。


「人の役に立ちたい」 とか 「ボランティアをしたい」 とか
「世界中の貧困を今すぐなんとかしなくちゃ!」 とか
そんな強い意志があったから始めたわけではなかった。


ある日なんとなく開いてみた新聞の広告に
大写しになっていた男の子の写真が、わたしを動かした。

涙をボロボロ流して、まっすぐな瞳でこちらを見ている男の子。

雷が打たれたような衝撃を受けて、心臓の鼓動が激しくなって
気がついたら電話していた。
その日のうちに、チャイルドスポンサーになることを申し出ていた。

その協会のシステムがどうだとか、金額がどうだとか
責任がどうだとか、今、本当にすべきなのか、とか
調べたり迷ったりする余地が一切なかった。
運命に導かれたとしか思えない行動だった。

自分にとっても予想外な出来事だった。


それはちょうど、わたしが精神的にボロボロだった時期を越えて
ありとあらゆる人、物、いのちのすべてに
「ありがとう」という感謝の気持ちが溢れ出してきて
見るものすべてが輝いて、生きているしあわせをかみしめていた頃。


今にして思えば

こころのどこかで、何か恩返しがしたかったのかもしれない。


わたしがお付き合いすることになったチャイルドは、バングラデシュの幼い少女。

紹介カードに添付されていた写真は
真っ黒に日焼けして、ガリガリに痩せ細った、
それでも瞳にもの凄いパワーを宿してこちらを見つめる少女の顔だった。
彼女との関わりの、始まりだった。

*

そんなある日突然の行動から始まって
気がつけば、10年という月日が経っていた。


これまで、クリスマスカードのやりとりや、お誕生日カードを送ることはあっても
実際に現地に向かって、その少女に会うことはなかった。

プロジェクトの地域は、本当に貧しかったり、危険な地域が多いようで
個人ツアーで行くには渡航が困難だったり、ガイドがつくとしてももちろん英語だったりする。
たまに計画されるチャイルド訪問ツアーも
自分のチャイルドが住む地域を訪れる機会は、数年待ってもやってこないのが現実。

それでも気がつけば、節目の10年。
この年月の間に、スポンサーになったおかげで得たものがいっぱいある。
弱くてずるい自分と向き合い、無責任さに気づかされて唖然としたこともあった。

そこで気持ちを切り替えてからは
自分で決めて始めたからには、このプロジェクトを自分からは降りるまい、
その少女と地域が自立する日がくるまではずっと続けよう、と思わせてくれた。

*

そして、10年目の少女の誕生日。
あどけない幼子は、すっかり年頃の少女に成長していた。
節目の誕生日だったからなのか、なんなのか・・・
いつもとは違って、なぜかわたしは
手紙やシールだけで封を閉じることができずに
なにかもっと特別なものを一緒に送れないかな・・・と辺りを見回して・・・

ビーズでできた、天使のストラップを一緒に送ることにした。


それは、一見なんてことない天使のチャームなんだけど
ふたつおそろいになっていて、片方を自分の大切な人に渡す・・というものだった。

今まで、どの友達にも、身内にも、彼にもあげることができなかったものだった。

それを、なぜか会ったこともない、遠く離れたその少女に、渡そうと思った。

手元に届いて喜んでくれるといいな。

なんて思っていた。

*

けれど、その封筒を投函してから一週間程経った頃、協会の事務局から連絡があった。

10年間支援してきた少女とその家族は、暮らし向きも安定してきて
自分達で生活していける目途が立ったので、プロジェクトからはずれました。
支援はこれにて終了です。彼らの行き先はわかりません。

というような内容のものだった。


あまりに急なことで呆然とした。

あまりにもあっけなかった。


何度か事務局の人とやりとりして、誕生日カードのことを話したり
彼らの行方、手紙の行方を追ったりしたけれど
彼らの行方はおろか、わたしが出した手紙の行方もわからなくなっていた。
彼らに手紙が届かないばかりか、どこを経由したのかもわからずに
こちらに返送される宛はほぼなくなった。

悲しいけれど、これが現実。
出した手紙が紛失するなんて、他の国では・・・
ましてや情勢が混乱している地域なら、めずらしいことではないのだろう。

せっかく同封した、天使のストラップ
ソウルメイトの証、と思って入れたのに。
今頃、天使はどこかで迷子になっているはず。
なんだかさみしい結末だったな・・・

なんて思ったりしていた。

*

でも、よくよく考えてみたら

これって一番ハッピーで喜ばしい結末じゃないか。

自分達で生きていける目途が立ったなんて。
家族みんなで、新しい土地に旅立つことができたなんて。


わたしはどこかで期待していたのだろう。
ドラマのような感動の結末を。
「チャイルドスポンサーと少女の10年越の友情」だとか、「感動の対面」とか。

自分は何も求めず、使命だと思って続けてきたつもりでいた。
毎月送るこのお金は、わたしのものではなくて、バングラデシュに住む少女のものだ。
この世では、何らかの理由があって、わたしを経由して持ち主に送っているだけだと。

それでもどこかで、感謝されたがっていたのかもしれない。


最後の最後で、またまた自分というものを思い知らされたな・・・(^−^;


一度も会うことができなかったけれど
手を握ることも、抱きしめることもできなかったけれど
縁あって関係を結ぶことができたことに、ただただ「ありがとう」
たくさんのことを教えてくれて、本当に「ありがとう」

これからも、いろいろなことがあると思うけど、家族皆さん、元気でいてね。

*

次のチャイルドは、なんとまたバングラデシュの、同じ名前の少女だった。
今月からまた、彼女とのご縁が始まります。
 


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Tracked on August 31, 2008 at 10:17 PM

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