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はじめの一歩

今の職場でさみしいことは、

挨拶を交わすことが少ないこと。

挨拶って、どんな仕事をしていても、子供でも大人でも、
はじめの一歩の言葉だし、
相手に対する気持ちの表現だし、
何をするにも基本中の基本だと思う。

よその国に行く時も、はじめに覚える言葉は

「こんにちは」

とか、

「ありがとう」


でもそんなあたりまえのことをできない大人はいっぱいいる。
自分だってそんなにいつも愛想よくできる大人じゃない。
でも、せめて朝、最初に会った時は

「おはようございます」

って笑顔で挨拶したい。

こちらが言っても返ってこない。
ムスッとされて目も合わせない。
忙しいのはわかるけど、気が乗らないのはわかるけど、
毎日続くとしょんぼりしてしまう。

そういうのってさみしいよねって、
同じ思いの人達と話している。
挨拶ひとつで空気が和んだり、
コミュニケーションが始まったりするのにな。
これではこの先何年同じフロアにいても、
ふれあいは生まれないね。
割り切って働くにはいいんだろうけど。

相手が能面みたいな顔して挨拶してくれなくても、
挨拶すらできない人にはなりたくないと思って、
こちらはめげずに「おはようございます」って言っている。
ほとんど一方通行だけど、そういうプライドは捨てたくない。


そんな思いを抱えて乗っていた。
いつもと同じ満員電車。
その時のわたし、
仕事疲れで能面みたいな顔していたかも。
わたしだって、挨拶できない人のこと偉そうに言えない。
自分の周りの人達は、自分自身の鏡っていうからね。

その時、

誰かに足を思いっきり踏まれた。

ヒールの踵のとんがったところが、
わたしの足の甲を突き刺すように食い込んだ。

思わず

「いっ!!」

と声をあげてしまった直後に、

「ご、ごめんなさい!!」

と女の人が大声でわたしに言った。

澄んだ清らかな声で、わたしの目をまっすぐに見て、
ぺこぺこと頭を下げていた。
何より、本当に申し訳なさそうな顔をして謝る姿に、
その女性のこころが手に取るように伝わってきた。

足を踏まれたことに、もともと頭にきたりはしていなかった上に、
そんな風にこころから謝る姿を見て清々しささえ覚えた。

足を踏まれたと言うのに、
自分の顔がだんだん微笑んでいくのがわかった。

「ごめんなさい」は、言葉だけじゃなくて、
その人のこころ、態度、姿勢、すべてから伝わるものだ。
すべてを使って伝えるものだ。

朝の挨拶だってそうだ。
ただ言えばいいんじゃない。
わたしももっと、こころを込めて「おはよう」を言おう。
「ありがとう」を言おう。


昔読んだ本に、

「電車で足を踏まれた相手とも、前世では出会っている」

というフレーズがあった。

きっとそうなんだと思う。

同じ時代に生まれ、同じ日本で、同じ地域で、同じ時間に、同じ電車の同じ車両に乗って、体を密着させて、足を踏まれて、痛みを感じた。
その人の「ごめんなさい」の一言で、こころがあたたかくなり、感じるものがあって、こうして記事を書いている。

もう二度と、その人に会うことはないかもしれないけど
わたしにとって大きな出会いだ。

いや、わからないな。

顔を覚えてないから、もしかしたらまた会うかも。
もう会ってるかも。
同じ電車に乗るくらいだから、近くに住んでいるのかも。

そう思っていた方が、生きているのが楽しくなるな。

わたしに気づきをもたらすものは、
日常のあらゆるところに溢れている。

わたしがそれを受けとめようとさえすれば、どこにでもね。


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