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いのちを吹きこむ

わたしの母は趣味で絵を描いている。

好きなことだから、とても楽しいようだ。まして色を使うせいか、絵を始めてから母の健康状態は良くなった。

趣味が高じて、地域で絵の教室を開いたりしている。
春にはお花見を兼ねて写生会をしたりしている。
お弁当を広げて、外でごはんを食べて・・・みなさん楽しんでいるようだ。

その母が、毎年恒例の展覧会に出品する作品を制作中。
わたしは子供の頃から絵は好きだけど、今は自分で描いたりしていないので、描く側の目線や苦労はよくわからない。
それでも素人の意見こそ貴重らしく、よく母に率直な感想やアドバイスを頼まれる。

今日も意見を求められた。
今回は女性の人物画。
構図や色合いも、今回のものは私好みで好きだということを言った。きれいにまとまっている。でも、植物とモチーフの色が被っていてお互いが引き立たない感じや、人物がそのままペタッと張り付いている感じがして存在感がない、なにか物足りない、などと話した。

ふたりでどうすれば良くなるか話していて、

背景の植物の色合いがキレイすぎて、人物の存在感が浮き上がってこないんじゃないか、
モチーフの菜の花の黄色を浮き上がらせると、絵にあたたかさがでるんじゃないか、
ソファに掛けてある布の色が、植物の色と似ていてインパクトに欠けるから、柄を描き込むことでリズム感が出て、絵に面白みが出るんじゃないか、

などなど、一枚の絵を前にいろんなアイデアが出てきた。

母は、

「この植物の明るいグリーンが好きだから、あんまり汚したくないんだけどね・・・」

と言いながらも、背景の植物の一部を、人物の顔の周りだけ薄い紫色で暗くぼかしてみた。


するとどうだろう。

みるみるうちに立体感が出てきて、ペタッと張り付いていたような人物が浮き上がってきた。「そこにいる」存在感、空気感まで漂ってくる。
顔は一切筆を入れていないのに、その人物の顔色まで良くなった感じがして、目にも光が射したようにいきいきとした表情になった。
女性の着ているインナーの紫色と、植物に入れた紫がかった陰が関連して、絵全体もまとまりが出てきたし、紫の補色である黄色い菜の花も、自然と浮き立ってきた。

ほんのちょっとの筆入れで、みるみるうちに絵がいきいきとしてきて、ふたりして、

「うわー、さっきよりずっと良くなった!!」

と大喜び。
まだ完成ではないけれど、なんだかいい絵になっていきそうで嬉しくなってしまった。

例えば透明なガラスを描く時も、恐れずに汚い色や暗い色を塗りいれることで、よりガラスの透明感が出てくる。
今日の絵も、顔周りに暗い紫色を入れただけで、人物の表情がいきいきとして断然輝いてきた。
美しいものを描きたければ、それを引き立たせる陰の力を借りることで、より美しさが際立つのだろう。

以前、香水のことで聞いた話。
俗に言われる「いい香り」というのは、実はとんでもなく「臭い」と言われる香りと組み合わせることで、深みがでて、より「いい香り」が引き立つらしい。
ただ心地いいだけの「花の香り」や「果物の香り」だけを組み合わせても、深みがなく、印象にも残りにくいとか。
もちろんその「臭い」香りは充分に希釈するからこそ、効果を発揮するんだけど。

そう考えると、無駄なものってひとつもないね。

それぞれの役割が違うだけ、そういうことなんだ。

今日、久しぶりに絵と向き合って、自分でも絵を描いてみようかなと思った。
上手いとか下手とかは気にしないで、自分の心象風景を描いてみたい。

~流れるように、心のままに~

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